バスバー (ブスバー) は導体として機能する金属片または棒であり、電力を一箇所に集中させ、様々な産業における電力分配の効率を高めます。ほとんどの電力用途において、電源モジュールと外部環境を接続する主要な導電部材として重要な役割を担っています。
過去数十年にわたり、電力、モーター、産業機器、自動車産業など各業界で設計開発が進められてきましたが、バスバーは依然として電力分配における中核的存在であり、製造業から再生可能エネルギーに至るまで幅広い産業にとって不可欠です。その使用は、世界中の電気システムの効率性と信頼性を支える基盤となっています。2022年におけるバスバー市場は150億米ドル強と評価されており、2030年までにほぼ240億米ドルに成長すると予測されています。
バスバーの用途は、自動車、データセンター、研究所、機関、鉄道など、多岐にわたります。この記事は、バスバーの種類、用途、そして実装時に直面する具体的な課題について紹介し、工学シミュレーションがこれらの課題の克服にどのように役立つか、またSimScaleがどのようにそのプロセスを支援するかについて解説します。

バスバーとは
バスバーは、配電盤、分電盤、筐体内に見られる、銅またはアルミニウムで作られる金属片または棒状のもので、大容量の電流を結ぶ際に重要な役割を果たします。バスバーは導体として機能し、外部から送られてくる給電線から電力を集め、それを出力側の給電線へ分配します。つまり、すべての入力電流と出力電流が集まる電気的な接続点として働き、電力を一か所に集約させます。
バスバーを含むシステムには、アイソレーター (遮断器) やサーキットブレーカー (遮断機) が組み込まれています。万が一故障が発生した場合、サーキットブレーカーが動作して回路を遮断し、故障が起きたバスバー部分を迅速に回路から切り離すことができます。この仕組みにより、障害の影響を局所にとどめ、故障がシステム全体に広がるのを防ぎます。その結果、電力分配ネットワークの健全性と信頼性が維持されるのです。
バスバーの種類
バスバー構成は、単母線方式、複母線方式、環状母線方式の 3 つの主要な方式に分類されます。
1. 単母線方式
シンプルな設計を特徴とする単母線方式は、すべてのスイッチと回路を1本のバスバーで直接接続します。コスト効率とメンテナンスの容易さに優れており、比較的シンプルな設備に最適なシステムです。しかし、大きな欠点は冗長性の欠如です。ひとたび故障が発生するとシステム全体に支障をきたし、重大な運用停止につながる可能性があります。
2. 副母線方式
2本の並列バスバーを備えた二重母線方式は、連続性が極めて重要な環境に最適です。この構成により、電源供給を停止することなくバスバー間で回路を切り替えられるため、運用の柔軟性が向上します。システムの信頼性を高め、停電リスクを最小限に抑える一方で、複雑さ、コスト、設置スペースの要件が制限となる可能性があります。
3. 環状母線方式
環状母線方式は、回路をループ状に接続するリング構成を採用しており、各回路は2本のバスバーにアクセスできるようにすることで冗長性を高めています。主に配電網で利用されており、1つの区間で障害が発生した場合でもサービスの継続を維持します。ただし、ただし、このシステムを使用するには、設計や負荷管理が複雑になり、効率的に運用するには、綿密な計画が求められます。
バスバーを対象としたシミュレーションの実施
バスバーの正確なシミュレーションは、電気システムにおけるバスバーの性能と信頼性を最適化する上で不可欠です。注目すべき項目を以下に紹介します。
1. 渦電流の影響
バスバー内に発生する渦電流は、エネルギー損失を引き起こし、過熱の原因となることで効率や寿命に悪影響を及ぼす可能性があります。渦電流を正確にシミュレーションすることで、これらの損失や熱の影響を事前に予測することができます。
2. 抵抗損失
抵抗損失はバスバー設計において極めて重要な要素であり、効率や熱性能に直接影響します。これらの損失を最小限に抑えるためには、電気抵抗率の低い材料(たとえば銅やアルミニウム)を選択することが望ましいです。最も一般的な方法は、バスバーの断面積を大きくすることです。より厚いバスバーは抵抗が小さくなり、その結果、抵抗損失を低減できます。
バスバーの抵抗損失をシミュレーションし、複数の設計案で比較することで、抵抗やエネルギー損失を最小限に抑える設計を行うことが可能になります。
3. 構造強度
バスバーの機械的強度を確認することは、特に振動、熱膨張、荷重を受ける環境において、その耐久性と信頼性を確保する上で非常に重要です。有限要素解析(FEA)とシミュレーションを用いてバスバーの構造強度を解析することで、振動やその他の応力に対する部品の耐久性について詳細に検証することができます。
4. 温度上昇
過度な温度上昇は、材料の劣化、電気接続の信頼性低下、故障リスクの増大につながります。エンジニアはシミュレーションを通じて、さまざまな負荷条件、周囲温度、設置構成がバスバーの温度にどのような影響を与えるかを評価できます。

バスバーシミュレーションにおける課題と解決策
バスバーは単独で動作するのではなく、大きな電気システムの一部です。特定の用途に合わせて複雑な形状や曲げが施されていることが多いため、バスバーのシミュレーションはエンジニアにとって課題となります。従来のシミュレーションソフトウェアは、多くの場合、膨大なハードウェアと時間リソースを必要とし、エンジニアが設計を迅速に革新し最適化する上で大きな障壁となる可能性があります。
この障壁を克服するために、SimScaleは、Webブラウザから直接操作できるクラウドネイティブなシミュレーションプラットフォームを提供します。これにより、シミュレーション専用のハードウェアやインストールは不要になります。エンジニアは強力なコンピューティングインフラへの先行投資を必要とせずに、複雑なシミュレーションを並列実行できます。
さらに、バスバー設計では、電流、熱の影響、構造の健全性といったパラメータを、多くの場合一度に綿密に検討する必要があります。SimScaleを使用すると、エンジニアや設計者は、熱管理と電磁気挙動の同時評価など、さまざまな種類の解析を並行して実行できます。
さらに、バスバーにかかる電気負荷は一定であることは稀で、需要、メンテナンススケジュール、予期せぬ故障などによって変動します。動的な負荷条件をシミュレーションし、バスバーがこれらの変化にどのように反応するかを予測することは、実環境に耐えられるシステムを設計する上で不可欠です。
SimScaleの時間調和解析によるバスバーシミュレーション
SimScaleの電磁気シミュレーション機能であるTime-Harmonic (時間調和解析) は、バスバーの電磁気現象の計算に不可欠です。これは、時間調和条件の下で定式化されたマクスウェル方程式に基づき計算されします。

材料が正弦波的な励起を受けると、電界と磁界、そして電流は時間と共に正弦波的に変動します。これは、交流が主流のバスバー用途でよく見られます。
SimScaleは、マクスウェル方程式の低周波近似を実装し、変位電流を無視できるケースに焦点を当てることで、計算を簡略化しつつ効率的に解析を行います。この近似は方程式を単純化するものの、バスバーに関連する低周波用途においては十分に有効です。たとえば次のような現象の解析が可能です。
- 渦電流:交流磁場による電力損失や発熱に影響を与えるため、バスバーシミュレーションにおいて特に重要です。SimScaleはこれらの影響を詳細に解析し、不要な発熱や非効率性を最小限に抑えるバスバーの設計を支援します。
- 表皮効果:特に高周波での用途において重要な要素です。SimScaleのシミュレーション機能(今後実装を検討しています)により、エンジニアは導体の周囲における交流電流の流れ方を理解することができます。
- 近接効果:交流磁界の影響によって、並行して配置された導体間で電流の分布が変化する現象です。SimScaleは近接効果も対象としており、複数導体における電流再分配のシミュレーションが可能です。
SimScaleのクラウドネイティブ・プラットフォームなら、アカウントを作成するだけで数分でシミュレーションを開始できます。インストール不要・特別なハードウェア不要・クレジットカードも不要です。


