SREはイギリスを代表するサステナビリティコンサルティング会社です。2005年に設立され、地球に負担をかけずに建築環境が生活を豊かにすることを保証するというビジョンを掲げるSREは、当初から建物の環境パフォーマンス向上の取り組みの最前線に立ってきました。SREは、英国全土で2,900件を超える住宅、多目的利用、商業プロジェクトで500社を超えるクライアントと連携してきました。同社のクライアントには、建築家、プランナー、開発者、測量士が含まれます。45を超える様々なサステナビリティサポートを備えた SREは、開発または不動産ポートフォリオのサステナビリティ要件を満たすためのワンストップソリューションを提供します。
計画承認を加速するシミュレーション
SREは、エネルギーと環境の設計、建物の物理学、持続可能性戦略、建築規制と計画ポリシーの計画とコンプライアンスの4つの主要なサービスを顧客に提供しています。これには、建物や都市の計画、コンプライアンス、パフォーマンスベースの設計および運用サービスが含まれます。同社は、商業、医療、教育、住宅など、あらゆる種類の新築および既存の建物で建築家、請負業者、開発者と連携しています。エンジニアリングシミュレーションを活用して、新しい建物プロジェクトや都市開発の風関連リスクと計画コンプライアンスを実現します。
SREのテクニカルディレクターであるNikolaos Protogeros氏は、専門的なソフトウェア設計ツールを幅広く活用する建築物理コンサルタントのチームを率いています。主なモデリングタスクには、数値流体力学(CFD)を使用して風の快適さと建物の空気力学、自然換気設計、室内空気質、熱的快適性の予測が含まれます。最近では、熱橋やPSI値の予測を調べる建物の熱解析にCFDとSimScaleツールの使用を拡大しました。
チームは、Rhino®/GrasshopperとSketchupを広範に活用するCADおよびモデリングワークフローを開発しました。Rhino®とSketchup®はどちらもSimScaleへの簡単なインポートワークフローを備えているため、CFDをより容易に適用するためのシームレスなプロセスを実現します。SimScaleユーザーが最も頻繁に挙げる利点の1つは、風環境シミュレーションを実行するのにジオメトリのクリーンアップがほとんど必要ないことです。SREは、ロンドンを含む英国各地の都市でいくつかのプロジェクトに取り組んできました。ロンドンでは、グレーター・ロンドン庁(GLA)が計画承認を与える前に、計画許可に風環境評価が必要です。SimScaleの風環境シミュレーションは、セットアップ、結果の処理、視覚化など、ワークフローの大部分が自動化されているため、これらのタスクに最適です。
最近、2件の大規模開発が計画承認のために提出されました。どちらのプロジェクトでも、不快な風の条件を緩和するための樹木と手すりの影響をモデル化するために、SimScaleを広範に使用する必要がありました。
風の快適性を考慮した新開発
フォセット・ファーム (サッカースタジアムと複合施設)
- サウスエンド・ユナイテッドFCがサウスエンド・オン・シーのフォセット・ファームに移転し、16,226席のサッカースタジアムを建設する。
- 最大1,503戸の住宅ユニットの建設
- 3,658.10m2の混合クラスE床面積
- 一般床面積2,280 m2 、クラス F1 (教育非営利施設)/F2 (地域社会の施設) 混合床面積最大 280 m2
- サッカードーム2棟と付属施設の建設(総床面積1,680 m2うち2,275 m2はSUCETの共同利用、1,405m2はサウスエンド・ユナイテッドFCが利用)
- 関連する造園、アクセス、駐車場工事
- トレーニングセンターとクラブハウスの関連解体
SREは、フォセット・ファームの新設申請に伴い、風環境解析を実施しました。これは、提案された開発が風速に関して歩行者の快適性に与える影響と潜在的な効果を確認するためです。この風環境解析は、フォセット・ファームの概要(上記のマスタープランを参照)およびリザーブマターズ計画申請に関連してSREがこれまでに実施した以前の風環境調査に基づいています。すべての計算は、BREガイド「建物周辺の風の微気候」(DG 530)に従い、Lawson快適性(欧州規格)を評価しました。
日本の快適性評価基準
この事例で用いられているLawson快適性は欧州の企画です。SimScaleでは日本で広く用いられる、村上法と風工学研究所法による評価を実施することも可能です。詳しくは以下のページをご覧ください。
SimScaleなら速く・簡単に! ビル風解析・風環境シミュレーション
ビル風の評価方法と、SimScaleを使ってシミュレーションを行うメリットとビル風・風環境評価のための機能を詳しくご紹介します。
12の風向を分析し、その結果をさまざまな季節と年間の1時間ごとの気象データに対して正規化して、Lawson快適性との徹底的な比較を行いました。SimScaleでは、12の風向すべてを並行してシミュレートするため、時間と計算リソースを大幅に節約できます。風の快適性は、利害関係者とのやり取りを通じ、風環境への悪影響に対処するための適切な対策が設計に組み込まれました。評価する領域内の樹木は、アクセス可能な屋上テラスの手すりや柵とともに、景観設計に基づいて多孔質体としてモデル化されました。
Nikolaos Protogeros
Head of Building at SRE
SimScale is a robust tool undergoing continuous development and new features being added all the time. The software comes with great support, saving us huge amounts of time when we are trying to meet strict project timelines. Before using SimScale we used to spend a few days of work just setting up simulations and post-processing the results. SimScale does this for us in a few seconds and provides transient wind simulations which are even more useful. I work on UK projects remotely and the capability to collaborate on a simulation project using the cloud-native features in SimScale has been fantastic.
SimScaleは、継続的な開発が行われており、常に新しい機能が追加されている堅牢なツールです。 SimScaleはサポート体制も充実しており、厳しいプロジェクトスケジュールをこなすのに膨大な時間を節約できます。 SimScaleを使う前は、シミュレーションの設定と結果の後処理に数日を費やしていました。 SimScaleはこれを数秒でやってくれますし、過渡風シミュレーションも提供してくれるので、さらに便利です。 私は英国のプロジェクトにリモートで取り組んでいますが、SimScaleのクラウドネイティブ機能を使ってシミュレーションプロジェクトで共同作業ができるのは素晴らしいことです。
ケンブリッジ・ロード・エステート
この風環境解析の事例は、ケンブリッジ・ロード・エステート、バリット・ロード、キングストン・アポン・テムズにおける提案開発の計画申請に伴い、SREによって実施されました。この分析の目的は、提案開発が風速に関して歩行者の快適性に与える影響と潜在的な効果を確認することです。
ケンブリッジ・ロード・エステート開発は、キングストン・アポン・テムズ王立特別区(RBKuT)のノービトン地区に位置し、キングストン・タウン・センターに近く、キングストン墓地および火葬場の北側にあります。既存のケンブリッジ・ロード・エステート(CRE)には、RBKuTで最も多くの公営住宅が集中しています。現在、8.6ヘクタールの敷地には、高層ブロック、低層アパート、メゾネット・ブロック、テラスハウスが混在し、832軒の住宅が建っています。周辺エリアは概して低層から中層の建物で構成されています。提案されているエステートの開発は主に住宅で、コミュニティ用途、小売店、ワークスペース、そして1階のスペースが含まれます。造園された庭園、歩行者専用エリア、路上の駐車場と自転車駐車場を備えた広大な新しい公共空間も設けられます。
敷地面積は 88,556 m2で、マスタープランでは敷地内に 14 の異なるブロックに 2,170 の住宅ユニットが設けられます。フェーズ 1 - ブロック B と E は、敷地の南東境界に位置する建物です。
SimScaleを使用して、SREは2つの風の調査を実施しました。1つ目は、地上とバルコニーに風の緩和策として木を植えた特定の建物の詳細な計画です。手すりも追加され、中庭エリアの風の状態が評価されました。2つ目の大規模な調査は、4つのシナリオに基づいて開発全体を対象に実施されました。
- 既存の敷地と周囲の建物
- 既存の周辺建物と提案開発
- 緩和策と既存の周辺建物を考慮した開発計画
- 緩和策と既存の周辺建物を含む再開発の第1フェーズの詳細を含む開発提案
16の風向を分析して堅牢な調査を実施し、その結果をさまざまな季節と年間の1時間ごとの気象データに対して正規化して、Lawson快適性との徹底的な比較を行いました。適用サイト内の樹木は、アクセス可能な屋上テラスとバルコニーの手すりや柵とともに、景観設計に基づいて多孔質媒体エンティティとしてモデル化されました。
SimScaleと風関連の解析について詳しく知る
本記事は、https://www.simscale.com/customers/sre-urban-microclimate-analysis-planning/ の抄訳です。