風車ウェイクについて

風車ウェイクとは、風力発電用風車の風下で発生する風の乱れや流速の低下を指します。風車が風のエネルギーを取り出すことで、後流の風速が遅くなり、乱流が発生します。この影響で、近くの他の風車の効率が下がることがあります。
風車ウェイクを検討することは、風力発電所全体の効率を最大化し、発電量を正確に予測するために重要です。ウェイクによる流速低下や乱流の影響は、隣接する風車の発電性能を低下させるだけでなく、構造への負荷を増大させる可能性があります。これを適切に考慮することで、設置配置の最適化や運用コストの削減が可能になります。

SimScaleで流体解析を行います。SimScaleについて詳しくはこちらをご覧ください。
今回計算に用いるモデルの画像を以下に示します。ブレード直径が約55mの大型の風車を想定しています。今回は時間に依存しない定常解析としています。

今回解析に用いる風車の3Dモデル

流体領域と流入境界面を以下の画像に示します。赤色にハイライトされた面から10m/sの一様風が流入します。そのほか、流入境界面の反対側の面を大気圧流出、側方や上空の面を滑り壁、地面や風車表面を滑りなし壁で設定しています。また、風車のブレードを囲むように円柱を設定し、回転領域とします。10m/sの風に対して、10RPMの回転数で一定速度で回転するものとします。

流体領域と流入境界面(赤色にハイライトされた面)

2. 解析結果

流速の二次元コンターを以下の画像に示します。方向は、流れ方向の真横から見ています。
固定されているタワーやナセルの後流近傍では大きく流速が減少していますが、すぐに流速が回復するようするが分かります。一方で、ブレード部分の後流で落ちた流速はほとんど回復しないことが分かります。

三次元的な空間分布を把握するために、等値ボリュームにて流速と乱流エネルギーを示します。流速は8m/s以下で流入風よりも減少している領域、乱流エネルギーは0.15m2/s2以上で乱れが強くなっている領域を示しています。
これらの領域がおおむね一致していることから、流速が乱流構造へと変換されたと考えることができます。

流速の等値ボリューム 8m/s以下
乱流エネルギーの等値ボリューム 0.15m2/s2以上

今回のシミュレーションでは1基のみの風車を解析しましたが、複数基になるとさらに複雑な流動が発生します。風車は実機での実験も難しいことから、シミュレーションが大きな威力を発揮します。今回のシミュレーションにかかった時間は約1時間、計算コストは金額換算で約400円でした!必要なのは一般的なノートPCだけです。

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