SimScaleを活用して空力開発を大きく進化させた早稲田大学フォーミュラ学生チーム (早稲田フォーミュラプロジェクト) にお話を伺いました。
本記事では、同チームのこれまでの歩みを振り返りながら、直面した課題、取り組み内容、そして空力開発の変革においてSimScaleが果たした重要な役割をご紹介します。
早稲田フォーミュラプロジェクトは、約20名で構成される学生チームであり、学生フォーミュラ日本大会 (JSAE) に参戦しています。本大会には日本国内約70チームに加え、海外から約30チームが参加する権威ある大会です。
2022年大会では、オートクロスで見事6位を獲得し、エンデュランスの上位6台へ進出しました。2023年大会では、オートクロスの成績を大きく向上させたものの、エンデュランスにおける課題が影響し、惜しくも上位6台入りを逃しました。それでも着実な成長と強い意志を示す結果となりました。
SimScaleは私たちのエンジニアリングの可能性を広げ、ワークフローに革命をもたらしました。
- 早稲田フォーミュラプロジェクト チームメンバー

早稲田フォーミュラプロジェクトは、他の学生フォーミュラ参戦チームと比べると規模は決して大きくありません。
しかし、強い団結力を武器に、確かな存在感を放っています。内燃機関車両 (ICV) への情熱を原動力に、限られたリソースの中でも改良の糸口を見つけ出し、常に進化を追求しています。
課題: エンジンのオーバーヒート
オートクロスでは安定した走行を実現していた一方で、エンデュランスでは大きな壁に直面しました。
2022年、2023年ともに、エンジンのオーバーヒートが原因で完走を果たせなかったのです。
詳細な検証の結果、原因はラジエータを通過する空気流量の不足と、サイドポッド形状の最適化不足にあることが判明しました。
これにより冷却効率が最大限に発揮されていなかったのです。
この課題を克服するためには、ラジエータ内部を通過する流れの詳細の確認と、冷却性能を高めるためのサイドポッド形状の最適化が不可欠でした。
しかし、計算リソースやCFDの経験が限られる中で、ラジエータ特性やファン挙動を正確に再現したシミュレーションを実施することは、チームにとって大きなハードルでした。
解決策を模索する中で、チームはSimScaleに出逢います。
いくつかのシミュレーションを実行しただけで、その高い解析能力と操作性を実感しました。
SimScaleが、自分たちの空力・冷却開発を大きく前進させる可能性を秘めていることに気づいたのです。
私たちのコンピュータリソースが乏しい環境では、通常数日かかっていたフルモデルのシミュレーションを、SimScaleのおかげですぐに実行できるようになりました。
次に、SimScaleは最高レベルのユーザーフレンドリーなUIと、充実したサポート環境を備えています。- 早稲田フォーミュラプロジェクト チームメンバー

解決策: SimScaleによるCFD (流体シミュレーション)
フォーミュラカーの空力解析は、SimScaleが提供するチュートリアル「学生フォーミュラカーの周りの非圧縮性流れ」をベースに構築されました。
同チュートリアルは信頼性が高く、内容も理解しやすかったため、従来使用していたCFDソフトウェアからSimScaleへのスムーズな移行を実現しました。
解析では、Incompressible (非圧縮) ソルバーを選択し、乱流モデルには k-omega SSTモデルを採用。走行速度11m/sでの走行条件を再現しました。
ラジエータの再現には、ポーラスメディア (Porous medium) モデルを使用し、チュートリアルで示されている係数値を適用しました。
また、ラジエータファンについては、運動量ソース (Momentum Sources)モデルを用い、実際に車両へ搭載しているファンの性能データを組み込むことで、より現実的な条件を再現しました。
SimScaleのCAD編集の優れた機能性に大変驚かされました。
以前のCFDソフトウェアからSimScaleに問題なく移行でき、用意されている豊富なCFDツールのバリエーションにも驚きました。- 早稲田フォーミュラプロジェクト チームメンバー
ラジエータ冷却解析のために、彼らは約30ケースのシミュレーションを実施しました。
各解析はおよそ4~5時間程度で完了し、消費した計算リソースは約80CPUhでした。
初期設計段階では解析品質よりも開発スピードを重視しており、その方針は比較的軽量なメッシュ設定にも表れています。
通常メッシュの細かさは中程度 (Fineness 5) としており、約300万程度のメッシュでモデルを構築しました。
プロジェクト開始当初と比較して、この段階でラジエータ通過風量を約40%向上させることに成功しました。
この数値は事前に行なったシミュレーション結果とも一致しています。
従来のCFDソフトウェアでは正確な流量データの取得に苦労していましたが、SimScaleでは切断面や統計機能を活用することで、流量評価を容易に行うことができました。
さらに、結果出力の高いカスタマイズ性により、各シミュレーションにおける課題を的確に特定し、深く現象を理解することが可能となりました。
SimScaleを活用し、設計を継続的に改良することで、チームは目覚ましい進歩を遂げました。
SimScaleの導入により、空力開発における柔軟性、生産性、そして時間効率が大きく向上し、エンジニアリングプロセスそのものが大きく変革されたと彼らは実感しています。
短期間で当初掲げていた技術目標を達成できたことは、その成果を明確に表しています。
SimScaleでは、シミュレーションが開始したらタブを閉じて、PCで他の作業を続けることができます。
SimScaleを実行しながら、他のシミュレーション用のCADモデルを同時並行して作成することもよくありました。
さらに、シミュレーションはクラウドベースで、特定のコンピュータリソースに制限されないため、あらゆるデバイスや場所からアクセスしてレビューできます。
これによりチームの生産性が大幅に向上し、いつでもどこでもCFDシミュレーションを利用できるようになりました。- 早稲田フォーミュラプロジェクト チームメンバー

早稲田フォーミュラプロジェクトの次のステップ
早稲田フォーミュラプロジェクトは、今後も取り組みを継続し、ラフな高速設計から最終形状の決定に至るまで、さらなる検討と改良を重ねていく予定です。
より完成度の高いフォーミュラカーを目指し、解析精度の向上とメッシュ品質の改善にも取り組んでいきます。
SimScaleが備える幅広いシミュレーションの機能は、今後の開発においても早稲田学生フォーミュラプロジェクトの大きな力となるはずです。
SimScaleは今後も同チームとの継続的な協力を楽しみにしています。
もし、学生フォーミュラのスポンサーシップにご関心をお持ちでしたら、下記お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
本記事は、https://www.simscale.com/blog/waseda-formula-student-student-success-story/ の抄訳です。