この記事では、SimScaleを用いたヘルメットを着用した頭部の衝撃解析の事例を紹介します。

自転車やバイクの事故では、頭部への強い衝撃により重傷や死亡につながる可能性があります。ヘルメットの目的は、衝突時にライダーを頭部損傷から保護することです。今回は、自転車事故時にヘルメットが果たす役割を分析するため、有限要素解析(FEA)を実施しました。1つ目のFEAモデルは頭蓋骨のみで構成され、2つ目のモデルは頭蓋骨とヘルメットで構成されています。衝撃解析は、SimScaleのDynamicソルバーを使用して実施しました。

1. ジオメトリ

頭蓋骨の3Dモデル[1]は、SimScaleプラットフォームにアップロードされる前に編集されました。対称なモデルであるため、解析では頭蓋骨の半分のみが考慮されました。ヘルメットを着用した頭蓋骨と着用していない頭蓋骨のジオメトリをそれぞれ図1と図2に示します。

図1 ヘルメットをかぶっていない頭蓋骨の形状

図2 ヘルメットをかぶった頭蓋骨の形状

2. メッシュ

SimScaleの四面体メッシュアルゴリズムを使用してメッシュを作成しました。頭蓋骨の壁と内側および外側の表面においてメッシュを細かくしています。使用したメッシュを図 3 に示します。

図3 SimScaleにより作成された四面体メッシュ

3. 解析設定

衝突時の頭蓋骨への衝撃シミュレーションを実施するために、非線形動解析が実行されました。ヘルメットの有無にかかわらず、頭蓋骨には 6.944 m/s (25 km/h) の初期速度が与えられました。壁 (頭蓋骨/ヘルメットが接触する物体) は、剛性として定義します。また、頭蓋骨とヘルメットの対称面に対称条件を適用しました。
ヘルメットと頭蓋骨モデルの解析では、ヘルメットのストラップ部分を模擬するため、リモート荷重を使用して、ヘルメットのシェル(外殻)と頭蓋骨のあごの一部が結合された状態として定義しました。壁、頭蓋骨、ヘルメット間には拡張ラグランジュ法による接触を定義しています。衝撃を捉えるために十分に長い時間にわたって計算されました。

4. 解析結果

両方のケースにおける最も高い衝撃点における頭蓋骨のフォンミーゼス応力 (図 4、5、6) を示します。ヘルメットを着用していない方が頭蓋骨に高い応力がかかっていることがわかります。図 6 は、ヘルメットを着用していない場合の方が脳への損傷が大きくなることを明確に示しています。

図4 フォンミーゼス応力(正面図): ヘルメットを装着した状態(左)と装着していない状態(右)の頭蓋骨にかかる応力

図5 フォンミーゼス応力(側面図): ヘルメットを装着した状態(左)と装着していない状態(右)の頭蓋骨にかかる応力

図6 フォンミーゼス応力(側面図): ヘルメットを装着した状態(左)と装着していない状態(右)の頭蓋骨にかかる応力

図7にフォン・ミーゼス応力を時刻歴で出力したグラフを示します。フォン・ミーゼス応力(MPa)を比較すると、ヘルメットを着用していない場合の衝撃時の頭蓋骨の応力ははるかに高くなります。図8のグラフは、ヘルメットの有無による頭蓋内の加速度 (G) を示しています。ヘルメットを導入して衝撃の一部を吸収することで、加速度が約 35% 減少しました。

図7 ヘルメット着用時と着用していない時の頭蓋骨のフォンミーゼス応力の比較

図8 ヘルメットの有無による頭蓋骨の加速度の比較

図9 ヘルメット着用時と着用していない時の頭蓋骨の加速度 (側面図)

SimScaleを用いた衝撃解析により、ヘルメットを導入して衝撃の一部を吸収することで、加速度が約 35%、頭蓋骨に発生する応力が 60% 減少しました。自転車やバイクに乗る際、衝突時に頭部に重傷を負う可能性を減らすためにヘルメットの着用がとても有効であることを示すことができました。

SimScaleは無料でアカウントを作ってシミュレーションをお試しいただくことができます。