この記事では、SimScaleを用いたヘッドフォンの落下衝撃解析の事例を紹介します。今回は落下試験により 1.7 m の高さから落とされたヘッドフォンにかかる応力と変形を評価します。応力を評価した後、形状を変更し再度シミュレーションを実施することで、破損を軽減させる方法を検討します。
1. 解析設定
ヘッドフォンのCADモデルを下記に示します。今回検討するヘッドフォンでは、ヘッドバンドはPVC(ポリ塩化ビニル)、ハウジングはアルミニウム、イヤーパッドはゴムを想定しています。
次に、時間ステップを定義します。衝撃の詳細を完全に捉えるには時間ステップを十分に小さくなければなりません。ヘッドフォンの落下高さは 1.7 m であるため、自由落下速度の式(\(v=\sqrt{2gh}\))から、衝撃速度を 5.775 m/s と計算できます。今回の解析モデルでは、落下高さを18mmとして計算するため、落下時間はh/v = 0.018/5.775 = 0.00312 [s] であるため、落下するまでは時間ステップを0.001[s]とし、落下後は0.0001[s]とします。
2. 解析結果
ヘッドフォンの落下衝撃解析のミーゼス応力を示します。
最初のシミュレーションでは、ヘッドバンドとハウジングの接続部に大きな応力がかかっていることがわかりました。応力が降伏値 (55MPa) を超える 領域が2か所あり、塑性変形や破損が発生する可能性があることが分かりました。そこで、CADモデル を修正し接続部位を伸ばすことで、構造の剛性と強度を向上させました。修正前の解析結果と修正後の解析結果を下記に示します。
修正前の解析結果
修正部位と修正後の解析結果
CAD モデル修正後の解析結果では、他の部位でも高い応力がまだ確認されましたが、初期設計で確認された応力よりもはるかに低く、破損につながる応力レベルを下回る結果となりました。SimScaleによる衝撃解析を活用し、製品の寿命を延ばすためにさらに設計を繰り返すことで衝撃に対するリスクを軽減することができます。
SimScaleは無料でアカウントを作ってシミュレーションをお試しいただくことができます。