CAE解析では、設定を最小限に簡略化することが重要です。これにより、時間と計算リソースを節約できます。ボルト結合は、数が多くモデル化するとメッシュも増えてしまうため、構造設計者にとって悩まされる設定の一つです。
SimScaleでは、ボルト結合のシミュレーションプロセスを簡略化する新しい機能を導入しました。これにより、ユーザーはCAD モデルにボルト を追加する必要がなくなります。SimScaleのボルト結合機能は、仮想ボルトを所定の位置に追加するだけでボルトを考慮したシミュレーションが可能になり、複雑なボルトモデルを用意することなく、メッシュ数を抑えながら正確な結果を得ることができます。
図1:SimScaleにおけるボルト結合機能を使った解析の例
ボルト結合機能
SimScaleのボルト結合機能は、ボルトアセンブリに対し構造解析を実施する上でシンプルかつ効果的な機能です。ボルト結合機能によるいくつかのメリットをご紹介します。
- 複雑な解析設定を簡略化:多数のボルトが締結されているモデルに対して解析のセットアップを行う場合、各ボルト締結部に対し複数の操作が必要になり解析設定に時間がかかりますが、ボルト結合機能を使用することで設定が簡単になります。ユーザーは、各ボルトを複雑にモデリングする必要なく、ボルト結合をすばやく定義できます。
- メッシュの削減:ボルトをビーム要素として近似することにより、シミュレーションに必要なメッシュ数を削減することができます。メッシュ数を削減することにより、計算時間を短縮しメモリ使用量が削減されるため、ユーザーは計算リソースを意識することなく設計を最適化させることができます。
- 粗いメッシュでも詳細な計算が可能:ボルト結合機能は、粗いメッシュに対しても正確に計算することができます。ビーム要素として近似することでボルトの基本的な機械的特性を捉えるように設計されており、メッシュの解像度が低くても信頼性の高い結果が得られます。
- 直感的なインターフェイス:SimScaleのシンプルなインターフェイスにより、ボルト結合の定義が簡単になります。ユーザーは仮想ボルト結合をモデルに直感的に定義することができるため、複雑なシミュレーション設定を行う必要なくセットアップにかかる時間を短縮させることができます。
- 複雑なアセンブリを簡略化:ボルト結合機能により、複数な部品が組み合わされたモデルが簡略化されます。ユーザーは複数のパーツ間の相互作用を効率的に計算できるため、全体の動作が正確に表現されます。
- 追加の境界条件が不要:予荷重を加えることは安定性と強度を高めるための一般的な方法です。ボルト結合機能を使用することで、追加の境界条件を必要とせずにボルトに予荷重を簡単に設定できるため、セットアップを簡略化させることができます。
図 2: SimScaleのボルト結合機能によるボルト置き換えの例 (プロジェクトに移動)
SimScaleにおけるボルト結合の操作
多数のボルト結合部を持つ大規模な工業用フレーム構造を例に考えてみましょう。ユーザーは各ボルトを詳細にモデル化する必要があるため、複雑な CAD モデルと高密度のメッシュが必要になり、セットアップに時間がかかるだけでなく、かなりの計算リソースも必要になります。SimScale のボルト結合機能を利用すると、各ボルトをビーム近似で表現できます。
この機能の使い方を説明するために、ボルトの予圧がかかったパイプフランジの例を取り上げます。参考までに、図 3 にこのような接続がどのようになるかを示します。
図3: パイプフランジのボルト結合
実際のボルトモデルを使用せずに同等のジオメトリを用意します (図 4)。ここでのボルト結合はボルトとナットによる結合です。
図4:パイプフランジに適用されたボルトコネクタ機能
ボルト結合をモデルに適用する方法は次のとおりです。
- [Connectors] の下の [Bolt Connector] 属性を選択します。
- 希望するボルトタイプを選択します:
- ボルトとナット:これは、ボルトの頭とナットの位置の間の仮想的な結合です。
- ネジ:これは、ネジ頭の位置と、ネジ山部分を表す円筒面との間の仮想結合です。
- ボルトシャンクの直径を入力します。
- ボルト結合の機械的特性を設定します。
- ボルト材料のヤング率の値を入力します。
- ボルト材料のポアソン比の値を入力します。ポアソン比は -1 ~ 0.5 の範囲の値を取ることができます。
- ボルト材料の密度を入力します。密度は単位体積あたりの質量です。
- ボルトに予荷重がある場合は、トグルをオンに設定してボルトの予荷重を有効にし、仮想ボルト内のプリテンションを定義します。
- 取り付け時にボルトに適用される張力を定義します。
- 割り当てられたエンティティの変形動作を選択します。ユーザーが「変形可能」を選択した場合、エンティティは追加の剛性を適用せずに変形できます。「変形不可」を選択すると、エンティティは固定されます。
- ボルトの頭とねじ部の面を割り当てます。
ボルト結合機能は、図 5 に示すように、同様の適用プロセスでネジタイプのボルトにも使用できます。
図5: 「ねじ」タイプのボルト結合機能
このようなモデルの簡素化によりメッシュ数が減り、シミュレーションが高速化され、メモリ使用量が削減できます。メッシュが粗くても、シミュレーションではボルト結合による機械的動作を正確に捉えることができるため、フレームの構造性能に関する信頼性の高い洞察が得られます。
SimScaleの直感的なワークフローにより、生産性がさらに向上します。ユーザーは、ボルト接続をすばやく定義および調整し、さまざまな構成を試し、ボルトの予圧を簡単に適用できます。その結果、設計プロセスがより効率的になり、ユーザーは複雑なシミュレーションの管理ではなく構造の最適化に集中できるようになります。
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