濡れ性について

性能のいい傘では、傘の表面に付着した雨粒は球に近い形ですが、性能の悪い傘では雨粒がべたっとつぶれた形をしています。これは、固体表面の濡れやすさに違いがあるためです。液体が固体表面をどの程度濡らすかを表す特性を「濡れ性」といいます。この濡れ性は、固体・気体・液体間の界面エネルギーのバランスによって決まります。濡れ性をコントロールすることで、例えばヨーグルトのフタの裏にヨーグルトが付着しないようにするなど、さまざまな応用がされています。この濡れ性を表す指標として「接触角\(\theta\)」があります。接触角\(\theta\)が小さいほど濡れやすく、大きいほど濡れにくいことを示しています。


(静的)接触角\(\theta\)は、Youngの式によって、①固体-液体界面張力\(\gamma_{SL}\)、②固体-気体界面張力\(\gamma_{SG}\)、③気体-液体界面張力(表面張力)\(\gamma_{LG}\)と以下の関係が成り立ちます。

\[\gamma_{SG}=\gamma_{LG}\mathrm{cos}\theta+\gamma_{SL}\]

SimScaleでは、静的接触角または動的接触角を設定し、濡れ性を考慮することが可能です。

以下の事例では、表面張力の影響が顕著に表れるマイクロチャンネル内の気液二相流が、濡れ性の違いによってどのように流動が変わるかを検証しています。

VOF法を用いたマイクロチャンネル(微小流路)の気液二相流解析

1. 解析設定 SimScaleでVOF法を用いた混相流解析を行います。マイクロチャンネル内を流れる気液二相流は気泡と液スラグが交互に流れる特異な流動を示します。ここではT字…

1. 解析設定

SimScaleのアドオンであるMulti-purposeを用いて、VOFによる混相流の解析を行います。今回用いる解析に用いる形状は以下のものです。

境界条件で斜面の接触角\(\theta\)を指定します。今回は、10°、60°、110°の3条件としました。(特に設定を行わない面はデフォルトで90°となります。)

初期条件として液相の分布を指定します。以下の画像で青い部分が液滴、それ以外が空気になります。

2. 解析結果: 液滴挙動への濡れ性の影響

解析結果のアニメーションは次の通りです。アニメーションでは、等値ボリュームとしてVOFが0.5以上の液相を表示しています。カラーコンターは流速を示しています。

接触角10°
接触角60°
接触角110°

接触角の違いによって違いが見られました。接触角110°の場合は、スムーズに液滴が排出される一方、接触角10°では液滴が濡れ広がり流速が小さくなるため、排出に時間がかかります。
排出後に液滴が消失しているように見えますが、これは液滴が飛び散ることで、VOF値が0.5よりちいさくなるためです。

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